【綾音】
「……あら? 零二くん、そこ間違ってるわよ」

【零二】
「あ、本当だ……」

――――――数分後。

俺は雨宮の助けもあり、彼女の数分の一というペースでは
あるが、不恰好ながらもなんとか仕事をこなしていた。

【零二】
「……雨宮、この予算に関してなんだけど……」

【綾音】
「どこかしら……? ああ、そこね……」

【綾音】
「ここはこうすれば……ホラ、ね? 予算内にきっちり
 収まるわ」

【零二】
「あ、ああ、本当だな……ありがとう」

俺への助言をしながら、自分のペースは落とさず着実に
書類を処理していく雨宮……

その姿は有能な生徒会長そのもので、本当にすごいと
思う。

…………しかし。

【綾音】
「……あら? 零二くん、そこ、また間違ってるわよ?」

【零二】
「あ、ああ……悪い」

【綾音】
「ふふっ……貸してみて。ここはそうじゃなくてこう
 すれば……ほら、できたわ」

【零二】
「…………」

……どうにも、さっきから距離が近い気がする。

俺の手は、雨宮が手を伸ばせば触れる位置にあり、顔と
顔は互いの吐息を感じるほど接近している。

そして何より、彼女が身を乗り出すたび、テーブルに
乗って普段より強調された胸のふくらみが……

【綾音】
「…………零二くん、どこを視ているのかしら?」

【零二】
「…………………………………………ふくらみ」

【綾音】
面白い冗談(vergnugt)ね。それとも、余裕の表れととってもいいの
  かしら?」