【紅葉】
「そんな……っ! まさか―――効いて、ない……!?」

石礫の雨をその身に受けながら、激しい痛みに肩を押さえ
紅葉は、最悪の予想を口に出す。

【陣】
「ご明察の通りさ。鋼は、僕さえも手を焼くほどの技能(スキル)
 秘めているんだ。唯一にして、最大の武器(とりえ)をね!」

【紅葉】
「唯一にして、最大の武器(とりえ)……?」

【陣】
「ああ、そうさ。鋼は、特別な才能の持ち主でね」

【陣】
「彼の肉体は、彼の理解出来る能力でしか、傷をつける
 ことが出来ないんだ」

【紅葉】
「な――――――」

【陣】
「彼の中に在る“常識”は、現実の『理』すらも凌駕する
 というわけさ」

【陣】
「つまり、彼にとって光線は大した威力ではなく、厄介で
 複雑な能力など、付加されるはずがない」

【陣】
「だから彼の肉体には、里村 紅葉―――君の攻撃なんて
 大したダメージにはならないのさ」

【紅葉】
「なんなのよ、それ―――私の『七人の断罪者』(アルカンシエル)は触れた
 相手に罪を背負わせる“能力”のはずなのに……!」

【鋼】
「戦闘中に、ごちゃごちゃいってるんじゃねえええぇっ!
 三文字以内で説明しろやあぁ、ボケがああぁぁっ!!」

【紅葉】
「ぐ……っ!」

陣の声に気を取られていた紅葉の隙を衝くでも無く、鋼は
苛立ちを覗かせながら叫ぶ。

紅葉は、これほど理に適わない相手に自らの“ 能力(チカラ)”を
理解させるなど不可能であると、瞬時に悟る。

いかな言葉を投げたとて、まず 冷静(まとも)にこちらの話へと
耳を傾けるようなタイプではない―――!

【紅葉】
『七人の断罪者』(アルカンシエル)すら効かないなんて―――どこまで
  脳筋馬鹿なのよ、こいつは……っ!!」

自らの肉体に限定されるとはいえ、陣の能力であれど
理解できなければ無効化してしまう、あまりに稀有で
デタラメな特殊技能。

――――――『俺様世界』(ワガママ)――――――

それこそが、鋼が編み出した唯一にして絶対なる独自の
技能による『魔力魔術兵装』(エイン・フェリア)だった。

【鋼】
「いいかチビ雑魚ッ! この天才の俺様が一言だけ助言
 してやる……! いいか、戦いに卑怯もクソもねえ!
 勝つか負けるかじゃボケっ!!」