水坂美樹

【零二】
「……俺は少しでも早く、またこの島に戻ってくるために
 お前と触れ合う時間を削って、バイトに費やしたんだ」

【零二】
「今思えば、自分勝手にも程があるよな……だから俺は
 一年前のクリスマスの、あの日―――」

【零二】
「お前に、振られたんだ」

他に好きな人が出来た……そう告げて、美樹は泣きながら
俺に別れ話を切り出した。

それは、俺がしてきた行動のせいで、美樹が悪いなんて
言うのは間違っている。

だからこそ俺は、美樹の足枷にならないよう……幸せに
なって欲しいからこそ、その願いを受け入れた。

引き裂けそうになる自分の気持ちを、必死に隠して……
受け入れたのだ。

【美樹】
「…………」

【美樹】
「それが、零二の知っている、私なんだよね」

【美樹】
「でも、違うの。本当は……あの日、私は―――」

【美樹】
「…………私、ずるい女なんだよ」

【美樹】
「零二が思っているより、ずっと穢れてて―――そして
 …………本当の私を知られるのが、怖いの……」

【美樹】
「あの日の真実を知ったら、きっと零二は……」

【零二】
「…………」

【美樹】
「ごめんなさい」

【零二】
「え?」

【美樹】
「ぜんぶぜんぶ、私が悪いの……これは、私の罪で……
 この日々は、贖罪なんだよ、きっと」

【零二】
「……なら―――話してくれ、美樹。お前の中の真実を。
 俺は知りたいんだ。全てを―――」

【美樹】
「私は――――――……」