【紅葉】
「私ね、里村 紅葉っていうんだけど……
あのさ、良かったら私とデートしない?」

【零二】
「え……?」

彼女―――里村 紅葉はくるりと回り、俺の前にちょこんと
立つと、唐突に自己紹介をして、そんな提案をしてくる。

【紅葉】
「だから、デートしようって言ってるの、デートっ!
今なら私、とってもお買い得なんだけど……」

【紅葉】
「どうかな?」

【零二】
「どうかな、って……ま、待てよ。いきなりそんな事
言われても、わけわかんねえって」

【紅葉】
「いきなりって、そりゃまあ……だって逆ナンパだし」

【零二】
「ぎゃ、逆ナンパぁ!?」

聞きなれない単語に、俺は思わず顔をしかめてしまう。

告白されるくらいならまだしも、さすがに逆ナンパなど
生まれてこの方、経験したことがあるはずもない。

そりゃ、多少戸惑っても無理はないというものだ。

【零二】
「まさかお前、ここの島のみんながお人好しだからって
詐欺紛いの事してまわってるんじゃないだろうな?」

【紅葉】
「んなっ! そんなワケないでしょっ!? それに私は
生まれも育ちも立派な島人だってば!」

【紅葉】
「ってゆーか、その……ナンパとか生まれて初めてだし!
正直、どうすれば良いのかなんか、わかんないし!」

【零二】
「じゃあ何が理由で俺を誘ってるんだよ?」

【紅葉】
「だから、その……れ、したの」

【零二】
「あん?」

【紅葉】
「一目惚れ……しちゃったの」

【零二】
「――――――」

もじもじとしながら、とても演技とは思えないほど頬を
真っ赤に染めて上目遣いにそう呟かれ、俺は一瞬思考が
停止してしまう。

【紅葉】
「私、今を悔いが無いように生きるのがモットーだし。
それに恋愛のイロハとか、わかんないから……」

【紅葉】
「とにかく、お兄さんに惚れたの! だからデートしよ?
ほら、とりあえずのお試しでいいからさっ」

【零二】
「お、おい! 引っ張るなって!!」