【零二】
「いいから、さっさとどいてくれ。絵的にやばいだろ
 今の状態は……」

【紅葉】
「あ、もしかして、れーじってば照れちゃってるの?
 うりうり~っ」

俺の胸板へ手を乗せて、ぐりぐりと身体全体を押しつけて
くるような動きで、里村はより一層密着してくる。

そのせいか、布団越しでも伝わる里村の温かく柔らかい
女の子な感触に、思わずぐびりと唾を飲んでしまう。

【零二】
「馬鹿っ! へ、変な動きをするなっ!!」

【紅葉】
「あぅ。な、なんか、すっごく熱くて固いのに触れてる
 感触が……」

……主語の無い里村の誤解を招きそうな表現を訂正したい
わけだが、あくまで胸板の話だろう。……たぶん。

【紅葉】
「んふふふふっ……れーじってば、どくんどくんって
 脈打ってるのが解るよ? 布団の上からでも感じる
 くらいなんだから……♪」

……心臓の鼓動の話だろうが、いちいち表現が誤解を
招きそうで困る。……本当に。

【零二】
「いい加減に、どけっての。起きられないだろうが」

【紅葉】
「いいじゃん、別に。まだ時間はたっぷりあるんだから。
 ……あと30分くらいは、こうしてても余裕だよ?」

【零二】
「馬鹿言ってないで……ってこら、押さえつけるなっ」

【紅葉】
「朝這いに来て、目の前にこんな美味しそーなれーじが
 いる状況で何もしないなんて無粋な真似、出来ないと
 思わない?」

【紅葉】
「ほらほら、せっかくだから、れーじのそのたくましい
 ソレで、私のことも(よろこ)ばせて欲しいな……」

……しつこいようだが、恐らくはこの胸板で抱きしめて
欲しいという意味での発言……のはずだ。

【紅葉】
「うりうりっ、ぐりぐりぃ~っ」

【零二】
「やめろ馬鹿っ! 洒落にならねえ動きをするなっ!!」

【紅葉】
「ひゃあっ!? ちょっと、だめっ! んっ……あんっ!
 れーじってば、急にそんな大胆に、動かない、でぇっ」

俺を押さえつけ、乗馬マシン扱いして動き始めた里村に
抵抗しようと足掻いた途端、艶めかしい声を上げられて
慌てて動きを止めてしまう。

【零二】
「へ、変な声を出すなっ」

【紅葉】
「んっ。やば、これ……ちょっと本当に気持ちいーかも」

【零二】
「ぐ……」

【紅葉】
「んんぅっ……なんだか、不思議な感じ……幸せって
 ゆーか、心も身体も繋がってるみたいな……あんっ」

【紅葉】
「変なスイッチ、入っちゃったかも……んぁっ、はぁっ
 ……もどかしくて、もっと、繋がりたい、のにぃ……
 満たされないのが、切ないってゆーか……んぅっ!」

まるで俺が本当にスイッチを押してしまったかのように
里村は熱を帯びた様子で、ぐりぐいと体重を乗せたまま
のしかかり、動き続ける。

【紅葉】
「れーじも、さっきみたいに、動いて……いーよ?」