【龍一】
「―――このっ……分からず屋ぁあぁーーーーーっ!!」

ほとんど反射的に、龍一は地面を蹴った。

卿介との戦いでガントレットに蓄積された魔力の全てを
右腕に注ぎ込み―――彼は優しき『眠り鬼』に突撃する。

【龍一】
「うぅぅぁあぁぁああぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

【卿介】
「―――!? チッ……!!」

卿介は咄嗟に、獲物の少女に向けていたカードを増殖させ
龍一に向かって放つ。

【龍一】
「…………ッ!」

その疾風のような攻撃は、龍一の頬の皮を切り裂いて
飛んでいく。

【龍一】
「…………!!」

度重なる攻撃……

自らに向けられたカードの刃を、しかし龍一は超人的な
反射神経により、最低限の動きで避け続ける。

【卿介】
「…………!」

ならば第三射―――今度は二つの風に乗り、卿介の下僕(しもべ)
乱舞する。

龍一は左右から襲い来るカードの群れを、今度はスピード
だけで振り切った。

もはや卿介の“風”では、この“雷”に追いつく事は
できない。

【卿介】
「…………ッ!」

―――ならば、そのスピードを利用する!

そう言いたげに真正面から放った、卿介の第三射。

しかし“雷”と化した龍一の前に、それは止まっているも
同然だった。

卿介のトランプは、霧崎のように念動力で動いている
わけではなく、(トランプ)そのものが生み出す風によって操作
しているに過ぎない。

風に任せただけのトランプのコントロールでは、これほど
接近すれば、精密な操作は不可能なのだ。

刃は龍一の頬をかすめ、頚動脈スレスレを横切り―――
後方の地面を抉った。

【卿介】
「―――クッ!?」

ならば第四射―――

そう構える卿介の動きより迅く―――龍一は、僅かに
発光する右手を前方に突き出した―――

【龍一】
「――――――『疾風迅雷』(タービュランス)――――――ッ!!」

――――――刹那。彼の身体は、稲妻と化した。

―――それは、周囲の風をも飲み込んで、なおも吹き荒れ
閃光を放つ雷神の矛槍―――!

【龍一】
「はあああああああああああぁッ!!」