【陽菜子】
「め……めがね……?」

……そう。

それは卿介の“トランプ”や陽菜子の“鳥籠(ケージ)”などより
よほど戦闘行為に向かないと思われる……“メガネ”の
形を模した『戦略破壊魔術兵器』(マホウ)だった。

【海美】
「こんなもの、もう二度とかける事なんかないと思って
 たのに……昨日までのわたしとは、さよならできたと
 思ってたのに……」

呟きながら、海美はメガネに手を伸ばす。

【海美】
「……でも、しょうがないよね。こうしなきゃ生き残れ
 ないんだもんね……」

そして海美は念じるようにメガネのブリッジに中指を
添えた。

瞬間、海美の身体から迸る『精神力』(マナ)が、一際強くなった
感覚を抱く。

【海美】
「皇樹君には、一番みせたくなかったな……」

【海美】
「でも、こうなちゃったら仕方ないよね……?」

それは彼女にとって、決別したはずの過去の自分。

捨て去ったはずのコンプレックスと、能力を解放した
喜びが()()ぜになり、過去の海美はなんとも形容し
がたい複雑な表情で陽菜子と卿介を見つめていた。

【海美】
「またわたしに、こんなものをかけさせるなんて……
 許せない」

【海美】
「わたしを何度も襲い―――そして皇樹君をこんな風に
 した貴方を、わたしは許さない……」

【海美】
「よくも……わたしの大嫌いなメガネをかけさせたわね。
 貴方には、相応の神罰を覚悟してもらうんだから!」