【サクラ】
「ねぇねぇ見て見て、マスター! どっちから食べて
 いいか迷っちゃうんだよ~!」

【零二】
「好きにしたらいいだろ……って言うか、まだ食うのかよ
 大判焼き」

【零二】
「昨日、袋詰めの大判焼きを一人で食べて苦しそうに
 うんうん唸ってたのは誰だったっけ?」

【サクラ】
「き、昨日の大判焼きと今日の大判焼きは違うんだよ!」

【零二】
「ああ、そうかい……」

よくわからない言い訳にやれやれとため息をつき、俺は
サクラと肩を並べて歩く。

戦いに明け暮れる日々の中だというのに、こいつときたら
まるでいつも通りに振舞っている。

きっとそれは今こうしている時間こそが俺達に残された
かけがえのない貴重な時間だという事を知っているから
なのだろう。

ならば俺も、この時間を大切に―――サクラと過すこの
時を純粋に楽しもうと心に決めた。

【零二】
「どうでもいいけど、これから昼飯を食いに行くって
 いうのにそんなに食べて平気なのか?」

【零二】
「後で“入らなくなった”って泣いても知らないぞ」

【サクラ】
「だいじょーぶだよっ! 甘いものをいくら食べても
 お昼ご飯は別腹なんだよ」

【零二】
「逆だろ、それは……はぁ、まあいいか」

常識はずれとは言え、信条は人それぞれだ。

偉そうに胸を張るサクラに苦笑し、少しでも彼女の胃袋の
中でお菓子が消化されるよう、歩く速度を緩めてやった。

……まあ、無駄な抵抗に終わるだろうが。