【サクラ】
「わぁ――――――……」
【サクラ】
「綺麗……」
【零二】
「そうだな……」
普段訪れない屋上から広がるその景色に、俺達は思わず
感嘆の声を漏らす。
今まで出入りしていなかったのが勿体無いと思うくらい
―――そこから一望できる光景は、素晴らしかった。
どこまでも広がる水面に反射する夕日が、眩く輝き照らし
俺達に、この世界の美しさを教えてくれる。
普段は気づけないような、こんなありふれた“日常”の
素晴らしさを実感できる……そんな場所だった。
【サクラ】
「ねえ、マスター……」
【サクラ】
「今日は―――ありがとう」
【サクラ】
「私のために、デートしてくれて……嬉しかったんだよ」
【零二】
「お礼を言いたいのは、俺の方だよ。お前のお陰で……
リフレッシュできたし、楽しかったぜ」
【零二】
「それに、こんな景色も見ることが出来たんだ」
【サクラ】
「……うん。こうして、マスターは私と一緒にいてくれて
とても大切にしてくれる……それが、嬉しいんだよ」
【サクラ】
「すごく、幸せなんだよ」
【サクラ】
「だから……私……」
【零二】
「……サクラ?」
今日一日、楽しそうにしていたはずのサクラが見せた
どこか寂しげな表情。
そこに隠された気持ちが解らず、俺は僅かに戸惑う。
―――思えば昨日から、どこか少しだけ様子がおかし
かった。
それは、気のせいなんかじゃないのだろう。
しかし俺には、それが何なのか……解らなかった。